藤原盆漆絵松竹梅鶴亀図丸盆(2) 江戸時代
価格 3万円(税込)
藤原盆は群馬県利根郡水上村大字藤原に産する盆で、主に手前使いに作られ狭い地域の中で流通しており、「商品として広く流通しなかったのでその地域周辺に残っているだけ」という話を聞いたことがあります。当地は古来よりトチ.ブナなど落葉喬木に恵まれたたので木地師が多く住みつき、日常使いの色々な形の盆を製作していたようで、都の感覚とは無縁の鄙の臭いのする古民芸の範疇に入る素朴な盆が人気があり、私も10数点扱いましたが今回紹介する盆は古民芸とは言い難い変わった上手のお盆です。径34,6~36,7㎝ 高さ1,8㎝ 重さ600g。全体から受ける印象は円形とは言い難く12~13角形の様に見えます。表面中央部には1,0x1,1㎝程の彫込があり、これを芯として17弁の菊花文が削り出されており、盆の上部には松竹梅が下部には双鶴,双亀が赤漆で描かれ、松葉と亀の甲羅には黒漆が添えられアクセントを付けており、その緻密な仕事ぶりには感心します。漆でこれだけの絵が描けるのはそれなりの腕を持った職人にしか出来ない仕事と思います。大きく描かれた上部の絵は見えますが、下部に描かれた双鶴,双亀の絵はルーペを使用しないと見えない程の細い線で描かれています。聞くところによると昔は冬になると会津から漆職人が来ていたというので、或いはそういう職人の手掛けたものかも知れません。裏面を見ると21,5x31,0㎝の底部があり口縁部と底部の間は手斧調整されています。お大尽の蔵から出たお品で手前使いに作られた民芸風のものではありませんが、こういう手の込んだ上手で来客用の藤原盆もあるということを初めて知りました。裏側に使用痕があります。それにしても今年の豪雪は藤原地域でも記録的だったそうです。